効果は薬物血液中濃度で

薬の効き目は投与量ではなく薬物血液中濃度が重要

beer

ビールを1杯や2杯 呑んでも、お相撲さんは ナントモ ないでしょうね。 たぶん

sumoutori

皆さんは何杯までビールを呑めますか? いくら頑張っても たぶん、 お相撲さんには勝てないでしょうね。

同じ1杯でも、お相撲さんの血中濃度と、僕たちのアルコール血中濃度に違いがあるからです。その理由は、体の大きさが僕たちと違うからでしょう。つまり、私たちより分布容積が大きいからちょっとやそっとでは酔いません。

お薬も同じです

同じ量の薬を服用しても、人によって薬物血中濃度が違いますので、効果も違います。いくら飲んでも効果が無い人がいれば、少量で副作用が出たりフラフラする人がいます。 実際に、同じ量の薬を服用しても得られる薬物血中濃度は薬によっては約30倍も違いがある薬もあるそうなのです。

つまり、投与量が同じでも、効果は人それぞれ違うんです。
でも、血液中濃度が同じなら、同じような効果が現れるのです。

お相撲さんも、僕たちとアルコール血中濃度を同じになる位呑んでくれれば・・・僕たちと同じ位に酔っ払うことが出来るでしょうネ。

つまり、投与量で血中濃度をコントロールできないのです。だから、血中濃度で投与量をコントロールすることの有効性が認識されているのです。

代謝能力による違い

僕は、仕事帰りに薬剤部の後輩やお医者さんとよく呑みに出かけて、日頃のうっぷん晴らしをしてノミュニケーションをとっています。でも、人によっては大きな体の人でも全く飲めない人がいらっしゃいます。お酒を飲むとすぐ真っ赤になって気分が悪くなってしまうのだそうです。

図1-2はコップ1杯のビールを飲んだ時の、A、B、C、Dの4人のエタノールとアセトアルデヒドの血漿中濃度を示します。

alcohol taisya graph

Aさんはエタノールの代謝が速く、アセトアルデヒドの代謝も速いので、ともに血中濃度は低いです。 気分が悪くなるのはエタノールの代謝物のアセトアルデヒドのせいですから、Aさんはこれくらいでは全く変化が見られません。また、沢山飲んでも気分が悪くなることもありません。

Bさんはエタノールの代謝は速いのですが、アセトアルデヒドの代謝が遅い。つまり、アセトアルデヒドの濃度がすぐに高くなり、ビールー杯ですぐ気分が悪くなる人はこのタイプです。

Cさんはエタノールの代謝が遅く、アセトアルデヒドの代謝は速い人です。Cさんはエタノールの作用は見られますが、気分が悪くなるまでには至りません。

 Dさんはエタノール、アセトアルデヒドともに代謝が遅い人です。Dさんは時間が経ってくるとアセトアルデヒドで気分が悪くなります。

薬も同じで、このように人によって代謝能力が違っていて、最適なアルコール量(薬でいうと投与量)は人によって違います。

 このような個人差を数字で定量的に表そうとするのが、薬物動態解析です。

この解析によって得られた結果から、どれだけ服用すれば、どれくらいの時間にどれだけの血中濃度になり、どれくらい持続するかを予測することができます。

つまり、薬の効果を確保し副作用がないよう安全に使うためには、TDM解析がなくてはならないということです。

参照 薬物動態の基礎 はじめての薬物速度論 南山堂 加藤 基浩 

(阿部)